入社日当日。

本当なら久しぶりのスーツに着替えて、しっかり朝ごはんを食べて、早めに家を出て...

不安と期待の入り混じったフレッシュな日常が始まるはずだった。

 

現実は過酷だ。

 

検査準備のため、朝6時頃から「モビプレップ」という液体2リットルを飲み始める。

メーカーは味の素。

なんでも腸の中をきれいにするためのものらしい。

といっても、自分はもう1週間断食してるし、腸きれいなんじゃね?とも思うが。

まあそういうルールになっている以上は仕方がない。

 

内視鏡の経験豊富な父曰く「薄い果物系の味のポカリ」との事。

ほのかなマスカット味を想像する。コンビニに紙パックで売ってるようなの。

2リットルっていうと、大きなペットボトル1本分でしょ?

ポカリだろうが、アクエリアスだろうが、なんちゃらスポーツ飲料だろうが、余裕っす。

それこそ頑張ればコーラだって2リットルいっちゃいますよ?

...なんて思っていたのに。

 

なにこれ、まずい。超まずい。

想像を絶するまずさ。

ドクターペッパー?とか、トクホ飲料?とか、そういうレベルのまずさじゃない。

敢えて説明するなら...

海水にポカリの粉を混ぜ混ぜしたものがほんの少しゲル状になったもの、みたいな。

 

しかも、さっぱり下痢が出ない。

ちょっ、昨日まではあんなに出てたじゃん!どうして?

...2リットル飲んでも出ない場合はさらに追加オーダーらしい。死にたくなる。

 

1.5リットル飲んだあたりで滝のように出始めて安堵。

何も食べていないくせにやたら汚い。

10回目くらいの排便でようやく透明色に。

食べてなくてこれって、自分どんだけ汚れてたのよ...

 

午後、いよいよ内視鏡検査を受ける。

お尻の部分に穴の開いた長めのトランクスに着替えさせられる。

あー、なんかここ尻尾とか通せそうだな...などと意味不明のことを考える。

既に現実逃避気味。

 

何度も「大したことない」と言われていたが、やっぱり初めてなので怖いものは怖い。

麻酔とか何にもないし。座薬とか浣腸ですらちょっと苦手なのに。

気休め代わりに左腕を右手の指でつねりながら痛みの予行練習をしておく。

見られると恥ずかしいので、こっそりと。

 

挿入開始。

肛門に異物が入っていく感じ。

正直、うげぇ~って気持ちになるも、別に耐えられないほどでは全然ない。

...あ、なんか余裕かも。

カメラさんいらっしゃい、とか調子に乗り始める。←バカ

――が、次の瞬間。

痛い!痛い!マジで超痛い!

恥も外聞もなくうめき声を上げてしまうほど、とにかく痛い。

「大したことない」と笑う父のどや顔が脳裏を過り思わず蹴りつけたくなる。

先生から「大丈夫?」と度々問いかけられても、答える余裕すらない。

ここで「だ、大丈夫じゃねーです...」とか答えてたらどうなったんだろうか。

 

一度奥まで入ってしまえばあとは痛みも無かったが、既にげっそり。

そしてモニタに映し出された自分の腸内を見るのが怖い。

「ここが盲腸ね」と説明されるが、直視したくない。

恐る恐るモニタを覗くと、盲腸のすぐ側の大腸内が大きくただれていた。

自分のような素人が見てもそれが異常だってわかる。

周りに点在する白い部分は膿らしい。

 

「潰瘍性大腸炎だね」

あっさりと宣告。

目の前が真っ暗になる。

 

あ、こりゃ内定取り消し決定だな...とか。

もう二度とカレーや揚げ物は食べられないな...とか。

マックも吉野家もココイチも餃子の王将もすべてに終止符、とか、色々絶望する。

 

その後、奥から肛門に向かってゆっくりカメラを戻しつつ、

炎症が起きている部分を一つ一つ説明してもらう。

1ヶ所2ヶ所どころの話じゃなかった。かなりの数だ。

そりゃ、痛む場所も毎回変わるわけだわな...

 

その後はあまり覚えておらず、

「安倍首相もかかった例の病気ですよね?」

「へ―、よく知ってるね。」

「そりゃまぁ...HAHAHA」

などと乾いた笑いを交わし、病室に戻った。

 

会社になんて報告しよう?

 

 

※この記事は、2016年5月8日に書きました。